PROJECT
STORY
プロジェクトストーリー
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2018年に発生した西日本豪雨災害は、岡山県倉敷市にも甚大な被害をもたらしました。その混乱の中で、西日本アチューマットクリーンは災害廃棄物の収集・運搬から仮置き場の管理、共同企業体の結成まで、あらゆる役割を果たしました。「地元の手で地域を守る」という信念のもと、自社のリソースと全国のネットワークを活かしながら、前例のない災害に挑んだ記録です。
2018年7月、西日本一帯を襲った豪雨は、岡山県倉敷市にも甚大な被害をもたらした。家屋は倒壊し、道路は寸断され、街中に瓦礫があふれかえった。そんな混乱のさなか、西日本アチューマットクリーンに一本の電話が入る——「明日から、仮置き場までの廃棄物を運べませんか?」
それは準備期間もほとんどない緊急要請だった。だが同社は即座に対応を決定。翌日には1台、次の日には2台と、車両を次々に投入していく。まずはできることから始めようという姿勢で、現場のニーズに寄り添いながら体制を拡充していった。
当時、岡山県と同社が所属する業界団体とは災害協定が締結されていたが、実際の現場では想定外の課題が次々に浮上した。一次仮置き場がすぐにいっぱいになり、次に必要となるのが「二次仮置き場」の運営だった。市からの要請を受けた同社は、その運営まで一手に引き受け、混乱の現場に秩序をもたらしていった。
災害対応はマニュアル通りにはいかない。だからこそ「自分たちがやらねば」という想いが、現場を支える原動力となったのだ。
災害対応が長期化するにつれ、行政の契約方式は随意契約から入札方式へと移行していった。ここで、西日本アチューマットクリーンは重要な選択を迫られる。
単独では担いきれない規模の仕事。しかし、だからといって外部の大手企業に任せてしまえば、地元にノウハウは残らない。そう考えた同社は、県内外の信頼できる企業と手を組み、自ら代表企業として災害廃棄物処理の中核を担う決意を固めた。
このとき鍵を握ったのが、熊本地震で実績を積んだ企業との連携だった。機材やシステムだけでなく、オペレーションのノウハウまで惜しみなく共有され、それがスピーディーな施設立ち上げと効率的な運用へとつながっていく。
行政と民間、そして地域が一体となって災害と向き合ったこの経験は、単なる復旧作業にとどまらず、「備える力」そのものを地域に根づかせるものとなった。地元企業だからこそできた連携。その覚悟が、災害対応の新しいかたちを示したのだった。
酷暑の中、休みを返上して現場に立ち続けた社員たち。その姿は、まさに“地域を守る背中”だった。
廃棄物が道路を塞ぎ、交通は麻痺。仮置き場まで車でたった5分の距離に、1時間以上かかることもあったという。そんな中でも、社員たちは「誰かがやらねば」という強い使命感を胸に、一つひとつの作業に全力を尽くしていった。
この経験を通じて社内にも変化が生まれた。例えば、ファン付き作業服の全社員支給は、この災害対応をきっかけに始まった取り組みの一つだ。過酷な現場で働く社員をどう守るか——その問いと向き合うことで、働く環境の整備もまた前進していった。
また、他県の同業者から惜しみない支援を受けたことも、同社にとって大きな学びとなった。「助けられた側が、今度は誰かを助ける側に」。その思いが、今後の災害時対応の礎となっている。
西日本豪雨という未曽有の災害に直面したからこそ、気づけたもの、得られたものがある。同社が掲げる「地域のために」という言葉は、今やスローガンではなく、実践によって裏打ちされた“誇り”なのだ。